札幌高等裁判所 昭和25年(う)663号 判決
原判決が証拠として被告人の当公判廷における供述及び小玉政三の盗難届を引用したことは所論のとおりであるが「被告人の当公判廷における供述」とは原審第一回公判調書中の被告人の供述記載を指すものであり該記載中には被告人の本件起訴状に対する刑事訴訟法第二百九十一条第二項後段による陳述として「事実はその通りでありまして……」なる記載の外盗んだ品物の処置についての被告人の陳述の記載がありこれと補強証拠である小玉政三の盗難届の記載を綜合すれば原判示事実を認定するに足り原判決には証拠によらずに事実認定をした違法はない。弁護人は前記原審第一回公判調書中の被告人の「事実はその通りでありまして……」なる供述は刑事訴訟法第二百九十一条第二項後段による陳述であつてこれを自白と見ることができない旨を主張するのであるが刑事訴訟規則第百九十七条第一項には「……陳述すれば自己に不利益な証拠ともなり又利益な証拠ともなる……」と明かに規定されているのであるから右の供述をその他の前記供述と相俟ちて之を自白と見ることに何等の支障はない。しかして右の自白は刑事訴訟法第三百一条に所謂自白即ち証拠書類たる自白調書とはことなること勿論で単に証拠書類たる自白調書の取調順序を規定したに過ぎない同条を引用する所論はもとより失当で論旨は理由がない。